| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-215

兵庫県におけるヌートリアの生息状況と農業被害の解析

*江草佐和子,坂田宏志(兵庫県森林動物研究センター)

ヌートリアは河川や湖沼のような水辺環境に生息する南米原産のげっ歯類で、その生息地域は西日本を中心に拡大傾向にあるといわれる。しかしながら生息状況の把握や分布拡大の要因分析はほとんど行われていないのが現状である。

そこで兵庫県下約4000集落を対象に、現在の生息状況や侵入・定着の時期、農業被害などの情報を収集したところ、現在分布域はほぼ全県に及び、生息数の増加とともに農業被害も深刻化していることが分かった。また得られた情報をもとに、分布拡大(集落への侵入の有無)や侵入・定着後のアバンダンスを左右する要因についても検討した。要因としては、河川の勾配、ため池や河川の密度、気温、侵入経過年数、アライグマなど競合する可能性のある動物の生息状況、捕獲圧などを取り上げ、ロジスティック回帰分析を用いて解析した。

分布拡大には、集落周辺への侵入状況や河川の勾配が関与しており、すでに侵入・定着がみとめられている集落におけるアバンダンスの増減を左右する要因としては、侵入経過年数や集落周辺のアバンダンスが主な要因として抽出された。また、捕獲圧が高い集落ほど、増加が抑えられる傾向もみとめられた。

分布拡大、アバンダンスの増減ともに集落周辺での生息状況が関与していたことから、対策を効果的に行うには、複数の集落を対象にした広域的な捕獲が必要だと考えられた。

日本生態学会