| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-216

外来種ヌートリアが池の生態系に及ぼす影響―捕獲開始後の変化から―

森生枝(岡山県自然保護センター)

ヌートリアMyocastor coypusは,南米を原産とする水生哺乳類であり,これまでに植物の根や地下茎などを主食とすることが知られている.ヌートリアは,岡山県自然保護センターの野外施設(約100ha)においても,開所した1991年から,池を中心にして定着していることが確認されている.開所以降の観察によれば,当初マコモやミクリが特に食害を受けたことから,ヌートリアは水辺や水中に生育する植物の根茎を食糧としていたと考えられる.その後,ヒシやドブガイの生育・生息にも影響を与えるようになった.

ヌートリアはヒシの種子を1994年秋期の池干しを契機に食物として利用するようになり,池面の半分近くを被っていたヒシは激減したが,2003年に実施したヌートリア捕獲後はしだいに元の状態にまで回復してきた.また,最近では泥底に棲むドブガイ(二枚貝)が相当数捕食されていることも明らかとなるなど,ヌートリアは植物の根茎だけでなく種子や動物をも食糧としていることが明らかになった.

捕獲については,2003年から2007年までに,巣穴が集中する池(周囲約530m,面積約1.4ha)を中心として,箱わなを用いて,45頭のヌートリアを除去した.この間の捕獲努力量は2028わな日であった.2006年(捕獲開始後4年目)には,03年の捕獲開始以降初めて幼獣の捕獲数がゼロとなった.それに伴い,マコモなどの水生植物の生育量は増加し,捕獲開始後5年目にはドブガイ個体数にも回復の兆しが現れた.

日本生態学会