| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-218

系外資源の年変動と繁殖価の季節性を考慮した外来種管理 −奄美大島におけるマングース対策試論−

*亘 悠哉(東大),阿部愼太郎(環境省那覇事務所),山田文雄(森林総研),宮下 直(東大)

外来種駆除対策においては、繁殖価の高い個体の駆除が個体群にもっとも大きな影響を与える。個体の繁殖価は、性別や齢、次回の繁殖までの時間に応じて変化する。このような繁殖価に関与する要因を考慮すれば駆除の効果はより向上するであろう。罠で駆除を行う小型−中型の外来動物が対象の場合には、植物や大型草食獣の場合と異なり、性別や齢を識別して繁殖価の高い個体を選択的に駆除することはできない。そのため、個体群全体の繁殖価の季節推移を明らかにすることが重要となろう。このような駆除効果の季節的な変異に着目した研究例はこれまで皆無であった。

本研究では、奄美大島に移入され、数多くの在来種を減少させた外来捕食者ジャワマングースを対象に、駆除効果の季節推移をシミュレーションにより推定することを目的とした。奄美大島のマングースの特筆すべき特徴として、冬鳥シロハラの飛来数がシーズンによって大きく変動し、大量飛来時にはマングースの主要な餌資源となることが挙げられる。そのため、本研究では系外資源であるシロハラの年変動も考慮して解析を行った。

マングースの繁殖期は、シロハラ年では1月に始まり、通常よりも2ヶ月ほど早まっていることが明らかになった。駆除シミュレーションの結果、通常年とシロハラ年ともに5〜8月は駆除効果が最も低い時期であった。一方で、通常年では12〜3月、シロハラ年では12〜1月、4月、11月の駆除効果が高くなった。罠のメンテナンスや作業ルートの整備など、マングースの駆除に直接は関わらない作業を駆除効果の低い時期に可能な限り行い、実際の駆除作業を駆除効果の高い時期に集中させれば、マングース駆除の効率はより高まると考えられる。

日本生態学会