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一般講演(ポスター発表) P2-219
エッグトラップによるアライグマ捕獲に関しては,箱ワナ捕獲の際に問題となる他動物の混獲を防止する効果と,箱ワナに対するトラップシャイ個体の捕獲に効果があることが既に明らかになっている.しかし,箱ワナとの捕獲効率の差に関しては,試行例数の不足などの理由から十分な検証がなされてこなかった.
そこで本発表では,特にエッグトラップと箱ワナの捕獲効率に関して比較を試みた.比較にはアライグマが十分に生息していると考えられる地域において同所的に設置されたエッグトラップと箱ワナの捕獲データを用い,それぞれ100TNあたりのアライグマ捕獲数を捕獲効率として比較した.なお,比較に用いたデータは,2006年3月から9月までの合計98日間に北海道内で実施されたアライグマ捕獲事業の記録で,各ワナの総設置箇所は140地点,捕獲圧は4,140TNとなった.
調査期間中のアライグマ総捕獲数は76頭(エッグトラップ16頭,箱ワナ60頭)で,捕獲効率ではエッグトラップが0.4と,箱ワナの1.4を大きく下回った.また,時期別の捕獲効率についても両ワナ間の差に大きな変動はなく,春季から秋季にかけて捕獲効率が漸次低下する傾向も一致した.このことから,アライグマの捕獲効率に関して両ワナを比較した場合に,現行の使用法ではエッグトラップの方が箱ワナよりも優れているとする根拠は得られなかった.エッグトラップの国内普及に際しては,捕獲効率の向上と併せて安全管理策や設置場所,設置方法など検討すべき点も多く残されている.しかし,エッグトラップには先述の利点以外にも,一般的な箱ワナに比べて小型軽量,安価で,メンテナンスも容易であるなど有益な特徴もある.従って,エッグトラップはわが国の野生アライグマ捕獲事業において,箱ワナとの併用によって,より捕獲効率を高めうる捕獲用具になる可能性は大きい.