| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-220
特定外来生物に指定されたアライグマ(Procyon lotor)は、農業被害や在来生態系へ与える影響が危惧され捕獲が行われている。捕獲には安全性・簡便性・効率の面から主に箱罠が用いられているが、低密度の地域では捕獲が困難となる。そこで、低密度の地域においてアライグマの利用度の高い場所を効率的に確認する手段として、イヌの優れた嗅覚を利用することが考えられる。このような「探知犬」は、ニュージーランドなどで既に実用化されており日本でもその育成や現場への適用が検討されている。しかし、日本で実用化する際の問題点などはまだ整理されていないため、特に嗅覚を利用した探知の実用事例についての資料収集および聞き取りを行い、特に探知犬を育成・維持する体制を中心に課題の整理を行った。
探知犬を育成・維持する団体および組織の事例は4つ(日本3例:検疫探知犬・麻薬探知犬・クマ追い犬、ニュージーランド1例:野生動物探知犬)あり、検討課題は大きく探知の能率と探知業務の遂行の2つが挙げられる。
探知の能率を高めるにはハンドラーと探知犬の関係が重要で、ハンドラーはイヌの信頼を得ること、探知犬の反応と状況を判断する能力が要求される。そのため、1対1の関係が望ましい。一方で、探知業務の遂行については、1頭の探知犬に対してハンドラーの交代が可能である方が都合がよい面もある。そこで、探知の能率と探知業務の遂行の間で調整が必要となる。日本での実現を考える場合、導入初期には低密度での探知が重要であるため、探知の能率を高めることが優先される。また、ハンドラーと探知犬が少数からの開始が想定され、探知業務の遂行には広範囲の移動が考えられる。そのため、移動の面から中型犬以下が好ましく、さらに臭いへの興味が強く、丈夫で環境に適する犬種の選出が必要条件として考えられる。