| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-221
中部山岳地域を流れる梓川は,その上流部においてカワマス Salvelinus fontinalisおよびブラウンマス Salmo truttaの定着がよく知られているが,中下流部におけるこれら外来魚類の生息動向についてはこれまであまり調べられていない.そこで,梓川中下流域における外国産マス類の生息状況を把握する目的で,松本市周辺における近年の捕獲状況を整理するとともに農業用水路を中心に現地調査を実施した。主に調査を行なった用水路は梓川左岸の幹線水路(幅5m,水深1m,延長約10km)であり,管理のために水を落とすタイミングを見計らって水路内を踏査し水路に取り残された魚類を投網により捕獲した.1998年から記録のある捕獲データによると用水路内で捕獲される優占魚種は2000年まではイワナSalvelinus leucomaenisであったのが、2001年からはブラウンマスに明瞭に置き換わっていた.現地から得られたサンプルを解剖した結果,1)ブラウンマスの食性はおもに魚類や比較的大型の水生無脊椎動物であること,2)繁殖期は10月から翌年1月の晩秋であることなど水路における生態的特性が明らかになった.またミトコンドリアDNAのハプロタイプ組成から,これら中下流域のブラウンマスの由来について検討を加えたい.