| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-222
一般に魚食性魚類は、孵化後の初期段階では動物プランクトンなどの小型動物を捕食するが、成長にともなって魚類を捕食するようになる。成長にともなうこのような食性変化には、捕食者の成長速度を最大化するという重要な意味があり、早期の魚食への移行は、その後の成長や生残率を高める。しかし、魚食へ移行するには、その時点における捕食可能な体サイズの魚類の存在が必要である。したがって、魚食への移行の可否は、同所的に生息する魚類との関係から評価する必要がある。オオクチバスは、北米から日本に移入された魚食性外来魚であり、移入先で増加して在来生態系に大きな影響を及ぼしている。そこで、本研究では移入先における本種の魚食への移行を在来種との関係から評価した。
宮城県北部に位置する伊豆沼(面積3.7 km2)において2006年6月から11月にかけてオオクチバス当歳魚の食性解析を行った。伊豆沼では餌となるコイ科魚類(δ13C=-29.6~-23.8 ‰)と動物プランクトン(δ13C=-33.7~-28.9 ‰)のδ13C値には有意差がある(p<0.001)ので、食性解析には炭素・窒素安定同位体比を用いた。オオクチバス当歳魚はどの月もサイズ(全長)とδ13Cに有意な正の相関が見られ(p<0.001, 8月のみp<0.05)、あるサイズ以上ではすべての個体が魚食となり、その最小サイズは季節が進むにつれて徐々に大きくなる傾向が見られた。すなわち、当歳魚個体群内に11月までに魚食に移行した個体と、動物プランクトン食に留まった個体が認められた。すべての個体が年内に魚食に移行できなかった理由に、伊豆沼のコイ科魚類の産卵がオオクチバスよりも早くから始まることが考えられる。