| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-223
現在,日本国内において,外来生物の侵入は生態系を攪乱するものとして注目され,海外から国内への特定外来種の持ち込みは厳しく制限されるなどの対策がとられるようになった.しかし,国内在来種が国内の他地域へ移殖される問題は,一般的にあまり重視されておらず,その生態的・遺伝的攪乱の影響についての研究も進んでいない. また,純淡水魚の場合は水系を越えて自力で移動することはないために地理的分化が進んでいるが,琵琶湖産アユが漁業・遊漁目的で全国の河川に放流されることで,そこに混入した琵琶湖産淡水魚による影響が危惧されている.そこで,本研究では,九州北部をモデル地域として琵琶湖産魚種の侵入・定着の現状を明らかにすることを目的とした.琵琶湖と九州は,共通して分布する魚種も多いが,地理的に離れているために両地域に由来する個体をmtDNAなどのマーカーで識別可能と考えられるため,mtDNAのチトクロームb(Cyt b)遺伝子を用いて,両地域に共通して分布する複数魚種の遺伝的分化と移入の有無を検討した.その結果,少なくともコイ科のゼゼラにおいて,琵琶湖由来と思われるmtDNAが九州北部の主要な河川全てに広がっていることが明らかとなった.