| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-224
外来種は生物多様性に対する主要な脅威のひとつであり、有効な管理方法を構築することが急務となっている。外来種を管理する場合、これまでは捕獲などにより直接的に駆除する方法が用いられてきた。しかし、多くの場合において直接駆除のみでは不十分であり、近年では環境改変や生物間相互作用を利用した間接的な方法が着目されている。間接的な管理方法は不適な環境を創出することで個体の侵入・定着を抑制する働きが期待できるため、分散能力の高い種に対しては有効性が高いと考えられる。
ウシガエルRana catesbeianaは1920年頃にアメリカ合衆国から導入され現在では全国に幅広く分布する大型のカエル類であり、外来生物法によって特定外来種に指定されている。ザリガニやカエル類、昆虫など多様なものを捕食するため、捕食や資源競争を介して在来生物群集に負の影響を及ぼすことが懸念されている。ウシガエルは警戒心が強く捕獲するのが困難であり分散能力も高いため、直接駆除のみで個体数を低減させることは容易ではない。ウシガエルに対する間接的な管理方法として、本研究では草の刈り取りに着目した。ウシガエルは池や水路の周りの草むらを隠れ場所として利用し草丈が高い環境を好むため、草刈りにより草丈を短くすることで不適な環境を創出できると考えられる。
本研究では千葉県佐倉市の谷津田で野外実験を行い、人為的に草丈を低くすることでウシガエルが減少するか検証した。その結果、草刈りによってその処理区の個体数が減少することが示された。またラジオテレメトリーによる個体追跡調査を行い、草刈りを行っていない処理区に生息する個体は同じ地域に留まるが、草刈りを行った処理区に生息する個体は新たな地域へ移動する傾向が見られた。このような結果と在来生物への影響を総合的に評価し、ウシガエルの管理における人為的な環境改変の有効性を考察した。