| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-225

大和川水系におけるスクミリンゴガイに対する天敵の捕食効果

*山西陽子(奈良女子大・理),遊佐陽一(奈良女子大・理)

スクミリンゴガイ Pomacea canaliculata は南米原産の大型淡水巻貝で、日本には80年代初頭に食料として持ち込まれ、水田や河川等で分布を拡大している。本種は外来種であると同時に稲の幼苗を食害するため、天敵を利用した個体群抑制の方法が模索されている。室内条件下ではスクミリンゴガイを捕食する在来の水生動物が多くいることがわかっているが、実際の野外における捕食の影響は分かっていない。今回は生物相が比較的貧しいと考えられている典型的な都市河川である大和川で調査した。

大和川水系における河川と農業用水路計31地点において、スクミリンゴガイ生息数と魚類やカメ類など大型動物の定量調査を行った。並行して園芸用ヤシマットに様々な大きさのスクミリンゴガイを生きたまま貼り、調査地に一晩沈めることによって被食量を測った。その結果、各地点におけるスクミリンゴガイ生息個体数と大型動物の種数の間に負の相関がみられ、かつ天敵となる種の種数との間にも負の相関が見られた。また、被食量は天敵個体数が増加すれば増加し、その場に生息するスクミリンゴガイの数が多ければ減少するという結果になった。このことは天敵が多いほど捕食圧が増し、逆に調査地の貝個体数が多いほど実験個体への捕食圧が低くなることを意味する。以上より、都市河川においても、より豊かな群集のほうが外来種の侵入に強いという可能性(biotic resistance)が示され、捕食圧がそのメカニズムに関わっていることが示唆された。

日本生態学会