| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-226
生態系に複数の外来種が存在する場合、外来種−在来種間だけでなく、外来種間にも捕食−被食関係があることが多い。このとき、外来被食者の密度が低下すると、それを餌としていた外来捕食者が在来生物を多く捕食するようになるなど、在来生物への影響が変化することも考えられる。このため、外来種対策を考える際には外来種間の相互作用も考慮に入れる必要がある。
静岡県桶ヶ谷沼には、アメリカザリガニと、それを捕食すると考えられるウシガエル・カムルチー・ミシシッピアカミミガメといった複数の外来種が生息している。特にアメリカザリガニは1999年の大発生以降、非常に高密度の状態が続いている。ザリガニ急増の直後から、絶滅危惧IA類のベッコウトンボを含むトンボ類や在来魚類、水生植物の激減が報告されるようになり、現在ザリガニの個体数管理が急務となっている。しかし、ザリガニ駆除が進行してザリガニ密度が低下した場合、外来捕食者のザリガニ捕食量が減少し、かわりに在来生物捕食量が増大する可能性がある。本研究では、外来捕食者とザリガニ、外来捕食者と在来生物、さらにザリガニと在来生物の相互作用を、ザリガニ密度の異なる二つの池で推定し、それらがザリガニ密度によってどのように異なるかを探ることを目的とする。
ザリガニと外来捕食者3種が利用している餌生物の割合は、炭素と窒素の安定同位体比をもとにしたmixing modelで推定した。その結果、ザリガニは主にリターに依存しており、在来生物への依存度は比較的小さいことがわかった。またザリガニ密度が高い桶ヶ谷沼においては、カムルチーがザリガニに強く依存していた。これは、ザリガニ密度が低い池においてカムルチーがザリガニと在来生物を幅広く捕食していることと対照的であった。以上のことから、ザリガニ密度の低下により、カムルチーの在来生物への影響が増加する可能性が示唆された。