| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-227

外来植物シナダレスズメガヤの侵入が砂礫質河原の植食者群集に与える影響

*吉岡明良,角谷拓,須田真一,鷲谷いづみ(東大院・農学生命科学)

外来植物の侵入は競争関係にある在来植物だけでなく、植物への依存度が高い栄養段階の植食者の組成にも大きな影響を及ぼす可能性がある。侵入が植食者に及ぼす影響は対象とする植食者の資源利用特性によって異なると考えられる。本研究では、植食者の外来植物の侵入に対する反応が、高次分類群(目・亜目レベル)間および種間でどのように異なるかを明らかにすることを目的とした。

外来牧草シナダレスズメガヤ(以下シナダレ)の侵入が著しい鬼怒川の砂礫質河原において、植食性昆虫を対象にシナダレの侵入に対する個体数の応答を目・亜目間で比較した。また、比較的同定が容易なバッタ亜目を対象に、種間での個体数の応答の違いを検討した。

調査では、植被のまばらな砂礫地(G)、シナダレ群落(E)、在来草地(N)の3ハビタットタイプごとに植食性昆虫の個体数を定量的に把握し、目・亜目間および、バッタ亜目の種間での、個体数のハビタットタイプへの反応の違いを分析した。その結果、Nと比べてEでいずれの目・亜目の個体数も少なく、カメムシ亜目は特にその傾向が強かった。一方GE間では、Eで少なかったカメムシ亜目とEで多かったコウチュウ目を除いた、他の分類群の個体数にはあまり差が確認されなかった。また、種単位の解析では砂礫質河原の固有種カワラバッタが特にEで少ない傾向があった。

これらの結果から、砂礫質河原において植食者の組成がシナダレの侵入の影響を受けていることが示された。また、咀しゃく性と吸汁性のような、高次の分類群に共通する典型的な資源利用特性から結果を解釈するのは難しく、カワラバッタのように特定の環境に適応した種を含む分類群に関して、種単位で解析を行う必要があることが示された。

日本生態学会