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一般講演(ポスター発表) P2-230
富山県立山センターは標高2450mの室堂平にあり、年間約100万人の登山者や観光客が訪れる。立山黒部アルペンルート沿線には平野部に生育する植物や外来種が侵入するようになり、近年は遊歩道沿いにも多数出現することから、これらの除去作業が行われている。全国の自然公園では入山者の靴泥を落とすマットを設置して、靴泥に含まれる種子の持込を防止している所が増えており、立山センターでも2003年からマットを設置している。しかし、このようなマットによってどれくらいの種子が捕捉されるか調べられた例は少ない。本研究は2006年8月から2007年6月10日までにマットに溜まった土を回収し、植物園(標高約20m)で撒き出し実験を行い、持ち込まれる種子の種類と数を明らかにすることを目的とした。
2007年10月までに15種(うち不明種1種)79個体が確認された。これらのうち、室堂平に自生する在来種は2種4個体で、それ以外はすべて平野部から持ち込まれたか、すでに侵入・定着している外来種(3種)であった。もっとも発芽数が多かったのはメヒシバで30個体、以下アキメヒシバ17個体、オオバコ15個体であった。個体数は少なかったが、トマト(いわゆるミニトマト)やイチジク属の一種(未同定種)が発芽してきた。一方、在来種のうち、ナガボノコジュズスゲは標高1600m付近までは自生が確認されているが、それ以上の標高での記録がなく、低標高地からの種子かあるいは立山以外の山から持ち込まれたものと思われる。
今回の実験は低標高での発芽実験であり、これら全ての種が実際に立山で発芽できるものではないが、近年の地球温暖化の影響によって立山の気温の上昇も観測されていることから、これらの種子が侵入した場合に発芽・定着できる可能性も大きくなることが予想される。