| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-233

小笠原の外来種モクマオウが優占する森林の林床における在来植物の群集構造

*畑憲治,加藤英寿,可知直毅(首都大院・理工・生命)

小笠原諸島では、外来木本種のモクマオウCasuarina equisetifolia Forst.が、人為的な攪乱跡地や一部の在来林分へ侵入している。モクマオウが優占する林分(以下モクマオウ林)の林床では、大量のモクマオウのリターの堆積が観察されており、このようなリターの堆積が在来植物の定着を妨げている可能性が示唆されている。本研究では、モクマオウ林の林床における在来木本種の定着の現状を把握し、モクマオウの優占度やリターの堆積量と在来木本種の定着との関係を明らかにするために、モクマオウが優占する林分と在来植物が優占する林分(以下在来林)において、林床における木本種の種構成とリターの堆積量について比較した。

2007年9月から11月の間に、父島の洲崎地区において、モクマオウ林と在来林において5m×5mの調査区をそれぞれ30箇所ずつ設置し、樹高1.3 m以下の木本種個体(以下稚樹)の個体数をカウントした。また、各調査区において20 cm×20 cmの範囲でリターを各調査区から1箇所ずつ採取し、器官別に乾燥重量を測定した。

モクマオウ林の林床における稚樹の個体数は、在来林におけるそれよりも小さかった。また、主要な在来木本種の稚樹の個体数に関しても同様の傾向が見られた。モクマオウ林の林床において出現した稚樹の総種数と在来種数は、在来林におけるそれらよりも少なかった。モクマオウ林の林床におけるリターの乾燥重量は、在来林におけるそれよりも大きかった。モクマオウ林におけるリターのうち、モクマオウの落葉の割合が最も大きかった。

本研究の結果は、モクマオウが優占する林分では、在来木本種の稚樹がきわめて少ないことを定量的に示した。稚樹が少ないことの原因の1つとして、モクマオウのリターの堆積による在来木本種の稚樹の定着の阻害の可能性が考えられる。

日本生態学会