| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-236
外来植物の防除に除草剤を使用する際には、飛散によって非標的植物に及ぼす影響を事前に評価し、生態系の保全を視野に入れて植生管理を行うことが求められている。平成17年に施行された改正農薬取締法では、環境中予測濃度が非標的生物(藻類・甲殻類・魚類)に対する毒性濃度を上回る除草剤の登録・使用を認めていないが、高等植物は毒性評価の対象外とされている。この現状においては、使用の際に感受性の高い非標的植物を認識し、十分なバッファーゾーンを設けて安全を確保することが望ましい。
日本各地の河川沿いで増えている地中海沿岸原産のイネ科植物セイバンモロコシは、フルアジホップによる防除が検討されている。フルアジホップはイネ科植物の脂肪酸合成に関与するACCase活性を阻害する除草剤であり、飛散しても在来の広葉植物に影響を及ぼす可能性は低い。しかし在来のイネ科植物が感受性である可能性は高く、適切な使用にはバッファーゾーンの設置が必要である。
本研究は、フルアジホップの飛散を想定した暴露試験に基づいて、日本の河川沿いに優占する在来のイネ科植物ヨシの成長阻害を回避するバッファーゾーンの範囲を検討した。ヨシは茨城県小貝川流域で種子を採取し第6-7葉期まで育成した個体を使用した。濃度を6段階に調整したフルアジホップ剤を処理した後、人工気象室内で7日間育成した。処理期間中の相対成長速度から推定した50%影響濃度(EC50)を毒性指標とし、フルアジホップの使用区画から距離に応じて減衰する飛散確率から求めた環境中予測濃度(PEC)と比較した。これらの濃度比(EC50/PEC)が、陸生植物に対する除草剤のリスク評価においてEUが定める基準値(Trigger)である5以上となる距離は10 m以上であった。従って、フルアジホップによるヨシの成長阻害を回避するバッファーゾーンは10 m以上と判定した。