| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-241

栃木県における特定外来生物オオハンゴンソウの分布様式

*中村昌代・西尾孝佳・小笠原勝(宇都宮大・雑草セ)

特定外来生物オオハンゴンソウは,明治時代中期に園芸用として北米から導入され,近年,河川敷や水路沿い,林縁等に逸出し,優占群落を形成している。栃木県でも,その分布が確認され,特に,日光国立公園内の戦場ヶ原周辺等では,大規模に蔓延し,ボランティアによる除去活動が実施されるなど,貴重な在来生態系への影響が懸念されている。このように,オオハンゴンソウの蔓延は問題視されているのにも関わらず,栃木県における地理的分布,生育立地,侵入経路,拡大過程等は,不明な点が多い。そこで本研究では,栃木県におけるオオハンゴンソウの侵入立地及び侵入パターンと,それらを決める要因を明らかにするために,異なる空間スケールでの分布調査と解析を行った。

調査は,2006年及び2007年のオオハンゴンソウの花期時(7月−9月)に行った。広域スケールでの分布調査は,5km×5kmの精度で行い,目視で確認された地点にて,位置情報と土地利用状況を記録した。調査範囲は,栃木県立博物館所蔵の標本情報に基づいた既知の分布地点を起点として,県全域まで拡大した。このスケールでは,オオハンゴンソウの個体群の分布と気温,降水量,標高等との相関を解析した。詳細スケールでの分布調査は,広範囲で大きな個体群の分布が確認された地域(日光,那須),小さな個体群が散在した地域(宇都宮)において,それぞれ1km×1kmの調査領域を設置した。このスケールでは,全てのオオハンゴンソウ個体群の位置,広がりの程度,土地利用状況を記録し,個体群の広がり及び分散パターンと土地利用や地形等との関係を解析した。

その結果,1)侵入地域と原産地域の気候的な類似性,2)日光周辺及び那須周辺での広範囲かつ集中的な蔓延,3)林冠が閉じた森林内での分布欠如,4)地域による分布パターンの相違,5)人の移動による二次的な分布拡大が示唆された。

日本生態学会