| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-242
外来植物が、農業などの人為的撹乱を受けて、その侵襲性を増すということは、広く知られている。外来植物が農耕地の生物多様性にどのような影響を与えているかを考えるためには、外来植物を含めた農耕地における植物群落の遷移を知る必要がある。しかしながら外来植物がそのような人為的撹乱地においてどのように分布しているのかについて、包括的、継続的に調査されている例はほとんどない。本研究では2003年7月に関東平野の利根川流域の32メッシュ(1km×1km)の水田、放棄水田、畦畔、のり面草地で行った植生調査(N=761)と同一の調査地点において、2007年の同時期に植生調査を行い、外来植物の出現状況の変化を解析した。その結果、前回の調査で、最も繁茂していたセイタカアワダチソウを含む、10地点以上に出現していた外来種のほとんどで、その出現頻度が低下していた。一方でアメリカアゼナ、アメリカタカサブロウの二種のみが出現メッシュ数、出現頻度共に上昇していた。これら二種は一年草であるが、その他の一年草であるヒメムカシヨモギなどが減少傾向にあることから、耕起などの撹乱による一年草群落の増加が原因ではないと考えられる。このことから主に関東以西において広く分布しているアメリカタカサブロウは、関東地方においてもその分布を拡大中である事が推測される。これはアメリカタカサブロウが広い生育立地を持っているためかもしれない。また最も繁茂していたセイタカアワダチソウは、出現頻度が2/3程度になっていたが、その減少要因について、特にクズやヨシといった在来多年草との競合関係から議論する。