| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-243
ナガミヒナゲシは地中海地方原産の外来種で,1990年代以降,都市近郊で爆発的に増加している.最近は河原の砂礫地など自然性の高い所でも確認され,その挙動に注意を要するが,これまで分布の実態に関する詳しい報告はない.そこで本研究では,東京都多摩東部地区におけるナガミヒナゲシの分布の現状と既存植物群落への侵入実態を明らかにすることを目的とした.
まず地形と土地利用の異なる7ヶ所に800m×800mの調査区を設置し,土地利用図を作成した.調査区を50m×50mのメッシュに細分し,各メッシュ内に確認された開花個体数を10の累乗オーダーで記録した.特定の土地利用の有無と分布の有無をみると,人工裸地(コンクリート)や住宅地を含むメッシュでそれを含まないメッシュより出現率が高く,都市的土地利用が卓越する地域を中心に分布することがわかった.特に中央分離帯や植込みのある道路沿いに大量に生育しており,道路が分布拡大の経路となっていることが示唆された.
次に,既存群落への侵入状況を調べるため,植物社会学的な手法をもちいてナガミヒナゲシが生育する65スタンドの種組成を調査した.その結果,ナガミヒナゲシが生育する群落は路傍や植込み内にみられるタイプ,河川敷の砂礫地にみられるタイプが大半を占めた.これを周辺地域で得られた一年生植物群落の既存資料と比較すると,前者は河辺の草本群落にきわめて近い種組成を,後者は春季畑地雑草群落や路傍雑草群落と類似の種組成をもっていた.以上から,ナガミヒナゲシは既に自然性の高い河辺の植物群落や耕作地周辺の雑草群落の構成種となりつつあり,今後都市を拠点に河辺や耕作地周辺に分布を広げていく可能性が高いと考えた.