| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-245

大阪湾周辺における熱帯性シダ植物3種の都市部への移入と分布拡大

村上健太郎(岸和田市立きしわだ自然資料館), 松井理恵((株)パシフィックコンサルタンツ), 森本幸裕(京都大学大学院地球環境学堂), 堀川真弘(森林総合研究所)

目 的:本研究では,亜熱帯〜熱帯域に広く分布し,大阪府南部から和歌山県にかけても分布しているシダ植物3種(イヌケホシダThelypteris dentata、モエジマシダPteris vittata、イシカグマMicrolepia strigosa)の,大阪湾周辺域における分布拡大傾向について示し,その要因について検討した。

方 法:3種のシダ植物について,都市の中心部36箇所(兵庫県高砂市〜大阪府泉南郡岬町にかけての大阪湾岸域)で調査し,生育の有無などを記録した。この3種のうち,イヌケホシダについて,その生活史特性を把握するために,万国博記念公園(大阪府吹田市)内に生育する45個体の葉の消長,胞子の散布時期について調べた。

結果と考察:イヌケホシダについて33箇所,イシカグマについて8箇所,モエジマシダについて3箇所の産地を確認した。1980年代初め以前の記録と比較したところ,イシカグマの2箇所を除くすべての記録が新産地であった。また,大阪府内のモエジマシダの記録は,大阪府初記録であった。イヌケホシダおよびモエジマシダについては,国外外来種である可能性が高く,潜在的に分布拡大ポテンシャルを持っていたとも見なせるが,イシカグマについては在来種であり,もし分布拡大しているとすれば,何らかの環境変化によるものと考えることが妥当である。3種の分布拡大の直接的要因は不明であるが,地球温暖化やヒートアイランドなどによる気温上昇と,何らかの関連があるかもしれない。特に分布拡大傾向が著しかったイヌケホシダの胞子葉の展開は,季節に関わらず行われており,このような雑草的な性質が,他種に比べてイヌケホシダの分布拡大力を高めているものと考えられた。

日本生態学会