| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-247

日本での農業生産に伴う温暖化ガス(亜酸化窒素)発生量の推定

*三島慎一郎,秋山博子,八木一行(農環研)

温室効果ガスの一つである亜酸化窒素(N2O)の人為起源の発生の中で、農業は全球単位でも日本国単位でも最も多くの割合を占めるとされる(日本・1990年に44%, Grreenhouse gas Inventory Office (GIO) 2007)。本研究では農業起源の亜酸化窒素発生量を国・都道府県単位で独自に推計した。日本のN2Oの総発生量はCO2換算で1990年に13.9Tg、2005年に11.2Tgであった。この減少には、農業の衰退とともに単位農地当たりの化学肥料窒素の投入の低下(116→92kgN)が寄与していた。耕地面積の多少をキャンセルするため耕地面積当たりで示すと、都道府県単位での発生量の加重平均値・最大値・中央値・最小値はそれぞれ1990年に2530・8253・2481・980kg/ha、2005年に2388・9505・2301・790kg/haと推計された。1990年を基準として2005年にどれだけN2O発生が変化したかを見ると、14県で増加し33県で減少し、都道府県単位での変化の平均値・最大値・中央値・最小値はそれぞ-6・22・-7・-55%であった。水稲が多く栽培される地域で減少する例が多く、主に家畜の飼養が盛んになった地域で増加する例が多かった。日本全体の人為起源の温室効果ガス発生量に占めるN2Oの割合はGIO(2007)によると1990年で2.7%と少なく、農業からのN2O発生の減少は微々たる寄与でしかないが、化学肥料窒素の低減によるN2O発生の低減は望ましい方向といえる。しかし都道府県別に見て主に水稲の多い地域で化学肥料窒素の投入の低減による減少が多い一方で、主に家畜の飼養が増えた地域で増加がみられ、農業の生産構造の偏りが進んだことが示された。畜産の分散化と糞尿の積極的利用がN2O発生量を一層低減するために必要である。

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