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一般講演(ポスター発表) P2-249
西表島の照葉樹林において、尾根やギャップなど乾燥した環境の樹幹につる植物のツルアダンが高密度で着生し、その林床に多量のリターが堆積することがしばしば見られる。このつる植物に由来する林床有機物の量や質の変化は、土壌生態系に影響を及ぼすと考えられるが、着生植物のリターが土壌生態系に及ぼす影響についてはこれまでほとんど調べられていない。
これらを踏まえ、私たちはツルアダンによるリターの供給が土壌生態系に及ぼす影響を調べる目的で、西表島の照葉樹二次林において、1)林床リターに占めるツルアダンの割合を調べ、2)その値を基に操作実験を行ないツルアダンリターが、土壌徘徊性動物群集、土壌微生物バイオマスCN、リター分解速度およびCN量に及ぼす影響を調べた。
結果:全林床リター量に占めるツルアダンリターの割合は5%以下であった。しかし、ツルアダンが着生している寄主植物の根元(半径1 m以内)では、ツルアダン落葉量は他の樹種の約115%(3.82 t/ha、3.33 t/ha)、全リター量は約55%(4.75 t/ha、8.71 t/ha)であった。林床リターを0 t/ha(裸地)、8.71 t/ha(ツルアダンなし)、13.46 t/ha(ツルアダンあり)の3段階に処理した方形区(50×50 cm)を用いて実験を行なった結果、土壌徘徊性動物群集、および土壌微生物バイオマスCNは3処理間で有意な差はなかった。一方、落葉リターの分解速度は「ツルアダンあり」で明瞭に早く、落葉リターのC、N含有量は「ツルアダンあり」が他の2処理よりも少なかった。
考察:これらのことから、ツルアダンが樹幹に着生し林床リター量を増加することで、その寄主植物の根元の落葉分解は促進し、炭素・窒素の動態が促進していることが示唆された。