| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-250

汽水湖沿岸域における土壌炭素フラックスの日変化に与える潮位変動の影響

*山本 昭範(筑波大・院・生命環境),廣田 充(筑波大・菅平センター),遠藤 政弘(環境科学技術研究所),鈴木 静男(環境科学技術研究所),鞠子 茂(筑波大・院・生命環境)

地球上で2番目に大きな炭素の貯蔵庫である土壌はグローバルな炭素循環において重要な役割を果たしている。そこで様々な生態系における土壌炭素動態の定量的な研究が進んでいるが、汽水湖沿岸域における研究はまだまだ遅れている。沿岸域は、水位の空間的、時間的な変動が特徴の生態系である。水位の空間変動は、植生の帯状構造を形成する要因の一つである。また、水位の時間変動は、潮位変動の影響を受け、その変化の大きさが日や時間帯により異なる。そこで本研究は、水位変化(変動幅)の大きさが異なる大潮、小潮の両日において、汽水湖沿岸域に帯状分布する3つの植物群落(ヨシ群落、イ群落、ススキ群落)を対象とし、潮位変動による水位の日変化が土壌炭素フラックスに与える影響を評価することを目的に行った。その結果、土壌炭素フラックスの値は群落間で異なることが明らかとなった。また、冠水するヨシ群落、イ群落における土壌炭素フラックスや環境要因の日変化パターンや変動幅は、大潮と小潮の日で大きく異なった。水位変化の大きい大潮の日では、ヨシ群落とイ群落の土壌炭素フラックスの日変化は水位変化に依存したが、地下水位の低いススキ群落では地温に依存した日変化を示した。特に水位変化の効果として、水位変化速度との相関関係があり、水位変化速度が増加するほど、土壌炭素フラックスの放出も増加した。これは、水位上昇に伴う水圧の増加が、土壌中や植物地下部へ影響し、放出を増加させたことが要因であると考えられた。しかし、地下水位が低いススキ群落と水位変動の小さい小潮の日では、水位変化速度との関係は見られなかった。以上より、汽水湖沿岸域の土壌炭素フラックスの日変化には、潮位変動による水位変化の影響が大きいことが示唆された。

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