| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-251

水田放棄後一年目の植生と炭素循環

下田星児(近畿中国四国農業研究センター)

耕作放棄地を適切に管理することによる、植生のバイオマス増加と土壌への炭素蓄積効果を検証するため、植生調査と土壌呼吸量調査を行った。広島県福山市で昨年まで作物栽培を行っていた圃場(水田8a・畑跡18a)を非耕作状態にし、草刈処理の管理区を設定した。草刈は一回目を2007年5月23日、二回目を7月26日に実施した。草刈後に、刈った草本を地面に残す区(草刈(残))と、圃場外へ取出す区(草刈(取))を設定し、植被率・草丈・刈取調査の結果からバイオマス量を推定した。水田跡地の草刈管理区では、タイヌビエ・アゼカヤ等のイネ科の水田雑草が優占し、植生密度の高い群落が形成される一方、非管理区ではヒメムカシヨモギ・セイタカ等のキク科植物による疎らな群落が形成された。この結果、草刈管理区の11月までのまでの枯死バイオマス量は554g m-2となり、非管理区と比較して約20%増加した。一方、畑跡地では、草刈管理を行わなくてもメヒシバを中心としたイネ科雑草優占へ移行したため、草刈管理区の枯死バイオマス量は1049g m-2で非管理区(984g m-2)とほとんど差がなかった。土壌呼吸量を測定した結果、草刈管理後の水田跡では非管理区の土壌呼吸速度が最大となった。非管理区は生存バイオマス量が最も大きいことから、生根の呼吸寄与が影響した可能性がある。畑跡地では第二回草刈直後の8月には草刈(取)区の土壌呼吸速度が最大となり、その他の月は草刈(残)区で最大となった。草刈(取)区は、草刈直後には地表被覆の薄さが地温の上昇を招き土壌呼吸速度が上昇し、それ以外の期間は有機物供給の大きな草刈(残)区で土壌呼吸速度が大きくなったと考えられる。

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