| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-256
河畔域では、河川生態系と陸上生態系の間で物質、エネルギー、生物交換が行われている。河畔域の捕食性節足動物にとって、河川から陸上へと羽化した水生昆虫は、外来性餌資源として補助的な役割を果たしていることが報告されている。そこで本研究では、河畔域の外来性餌資源である水生昆虫の分布、及び自生性餌資源である陸上昆虫の分布と捕食者である徘徊性節足動物の分布の対応、また餌資源利用割合を調べた。
調査は、長野県の千曲川中流の河畔域にて、2006年8月から10月に行った。河岸から0m地点(礫地)、30m地点(林縁部手前)、80m地点、150m地点、190m地点(共に林内)で水生昆虫、陸上昆虫、徘徊性節足動物を採取した。採取した試料は、同定、体長を測定後に60℃で24時間乾燥させて生物量を求め、炭素・窒素安定同位体比を測定した。
河畔域での個体の分布と徘徊性節足動物の餌資源利用割合が明らかになった。水生昆虫は、8月は全く採取されなかったが、9、10月と時間の経過に伴い、生物量が増加しており、特に10月の80m地点で多数採取された。陸上昆虫は、8月は林内で多数採取されたが、9、10月は、河畔域全体で採取された。一方徘徊性節足動物は、クモ類とオサムシ科が採取された。クモ類は調査期間中、林内で多数採取された。オサムシ科は8月に林内で多数採取されたが、9、10月は河岸側で多数採取され、特に10月の0m地点に多かった。河岸側と林内で採取されたオサムシ科は、共に期間を通じて、陸上昆虫を主な餌資源としていた。クモ類も主に陸上昆虫を餌資源としていたが、9月に河岸側で採取されたクモ類は、水生昆虫への依存度が高かった。
以上の事から、クモ類とオサムシ科の徘徊性節足動物は、羽化水生昆虫を餌資源として利用していたが、主な餌資源は陸上昆虫であり、羽化水生昆虫を補助的に利用していることが示唆された。