| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-258

高緯度北極陸域の海成堆積物層における二酸化炭素放出と微生物の有機物分解特性

*内田雅己(極地研), 内田昌男(環境研), 中坪孝之(広島大・院・生物圏), 神田啓史(極地研)

ノルウェー高緯度北極、スピッツベルゲン島北西部の沿岸では、隆起海岸の存在が知られている。発表者らの調査地であるニーオルスンでは、海成の貝化石が存在していること、および汀線付近の土壌と貝化石付近の土壌の物理構造と化学組成が非常に似通っていたことより、地表面下20-30cmのところに海成堆積物の存在が確認された。本研究では、氷河後退域の炭素循環機構解明の一環として、この堆積物層における潜在的なCO2放出速度および好気的条件下での微生物の有機炭素利用特性の解明を行った。

2007年7月、貝化石の存在する地点において、鉱質土壌表面下0-2、10-12および20-22cmの土壌を採取した。採取した土壌は実験室へ持ち帰り、2mmの篩で粗大物を取り除き、含水比を調整した。攪乱の影響を小さくするために、土壌は5日間インキュベーターで静置したのち、CO2放出速度を1-12℃の温度範囲で測定した。20-22cmの土壌については、土壌抽出液を得たのち、BIOLOG社のEcoPlateを利用して、31種類の異なる炭素源の分解の有無を調べた。

各測定温度において、土壌呼吸速度は土壌深度が増すにつれて小さくなる傾向が認められ、貝化石が認められた20-22cm深の土壌呼吸速度は、0-2cmの1/3程度だった。その一方、CO2放出速度の温度依存性は、深層になるにつれて大きくなる傾向が認められた。土壌微生物の有機炭素利用特性では、海成堆積物中の微生物は、31種類中15種類の炭素源を分解した。以上より、海成堆積物層においても炭素源を利用する微生物が存在し、速度は小さいものの、土壌呼吸に寄与していることが示唆された。

日本生態学会