| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-261
山岳地域の流域圏は,地形が複雑であり,かつ多様な生態系の一つ一つが比較的小さな面積でモザイク以上に分布しているという特徴を持つ。生態系の分布様式が単調ではなく,また,地形の複雑さ故に従来の生態学的調査や微気象観測を実施しにくい環境の生態系機能研究こそ,衛星リモートセンシングや数値気象モデルが有効である。しかし従来の手法による精度は生態系生態学や生物地球化学的な視点が要求するものにはなっていなかった。
岐阜大学21COE「衛星生態学創生拠点」では,岐阜県高山市郊外の流域圏生態系(総面積56.3km2,標高600〜1500m)において,2つのフラックス観測サイトを主な検証サイトとしながら,山岳地域生態系の構造・機能の時空間分布評価の高解像度化を目指している。対象領域には7つの植生機能タイプを含み,総面積の57%を落葉広葉樹林が,28%を常緑針葉樹林が占める。研究では,衛星および航空機リモートセンシングによる高空間解像度(2〜10m)での植生・土地利用形態分布の解析,葉面積指数のフェノロジー観測に用いる衛星データのクオリティチェック,数値気象モデルMM5の改良による高解像度化(1km -> 100mメッシュ)などを進めている。
これらの研究により,生態系の炭素・水・熱収支を100m解像度で評価することが可能となった。これは広く普及しているMODISの炭素固定評価モデル(MOD17)の100倍の解像度であり,この空間サイズは生態学的調査やフラックス観測との照合が可能である。今後さらに,生態系機能の時空間分布や,狭領域での生態系−気象相互作用系の解析を進めたい。