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一般講演(ポスター発表) P2-265
土壌呼吸は一般に拡散現象として取り扱われるが,降雨中,土壌水分の増加に伴って土壌孔隙の大きさが比較的短時間に変化するような場合に,土壌中の二酸化炭素(CO2)がどのような挙動を示すかは明らかになっていない.本研究では,土壌中のCO2濃度を複数深度で連続計測することによって,降雨時の土壌中のCO2濃度の変化を明らかにするとともに,土層内でのCO2の移動速度を推定することによって降雨が土壌呼吸速度に与える影響を検討した.
観測は,東京大学千葉演習林袋山沢水文試験地で実施した.CO2濃度計(GMT-221 VAISALA)は,深度5cm,15cm,25cmに埋設した.また,土壌中のガス拡散係数の算出のために,土壌サンプルを用いて空隙率の深度分布を求めた上で土壌水分の連続測定を行った.
観測結果から,多くの場合,降雨時に土壌中のCO2濃度が上昇することが示された.変化が現れるのは5cm深度がもっとも早く,降雨中からCO2濃度は上昇を開始するが,比較的短時間で低下し,明瞭なピークを示した.15cm深度での変化も同様の傾向を示すが,5cm深度に対してピーク出現の時間が遅れるとともに,より大きな変化を示した.25cm深度の変化は両者に対して遅れ,降雨後から上昇を開始し,低下にも時間を要した.結果としてピークは明瞭ではないが,もっとも大きな濃度変化を示した.また,25cm深度では,変化初期において一時的に濃度が低下することもあった.次に,土壌中のガス拡散係数を用いて5-15cm層(上層)と15-25cm層(下層)からの上向きのCO2移動量をそれぞれ推定すると,降雨時には,上層では一時的に移動速度が上昇し,下層では減少した.両者の差から,降雨時に土壌呼吸速度が上昇してCO2が土層より失われ,降雨後に補填されていることが示唆された.