| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-283
マレーシア、サバ州の熱帯低地林では、過去30年で商業伐採やプランテーション開発によって急激に森林面積が減少した。現在では、自然林はごく限られた保護区内に残されるのみで、そのほかは広大な択伐施業を受けた低質な森林が残されている。択伐施業は、伐出する樹木の数は少ないが、ブルドーザーを使って林内に縦横に道をつけるため、森林へのダメージが非常に大きい。一方、従来の択伐法と比較して、伐採時の林地へのダメージを軽減する低インパクト伐採が試みられている。そこで、養分循環や炭素貯留にとって重要な土壌有機物が、伐採によるインパクトでどのように変化するかを明らかにすることは、持続可能な熱帯林管理にとっても重要な課題である。本発表では、サバ州デラマコット森林管理区を例に、低インパクト伐採の導入が土壌有機物画分に及ぼす影響を明らかにするために、非伐採林(原生林)、低インパクト伐採林、従来型伐採林における、土壌有機物中の炭素、窒素、リン画分について比較を行った。
土壌有機物画分は、炭素、窒素画分を室内培養法による反応速度論的解析によって、リン画分を逐次抽出法によって行った。土壌表層0-5cmでは、面積当りの易分解性有機態炭素量や易分解性有機態リン量は、原生林、低インパクト伐採林、従来型伐採林で大きな差がなかった。一方、リター層では、原生林、低インパクト伐採林と比較して、従来型伐採林では、面積当りの易分解性炭素量がO1層で約70%に、O2層で約60%に減少した。低インパクト伐採は、特に有機物層において、易分解性有機物の保持に有効であることが示唆された。