| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-289

チベット高山草原の標高傾度に伴う生態系CO2フラックスの特性

*廣田充(筑波大・菅セ),張鵬程(筑波大・院・生命環境),高橋健太(茨城大・院・理工),根岸正弥(茨城大・院・理工学),下野綾子(国環研・生物),沈海花(国環研・生物),唐艶鴻(国環研・生物)

チベット高原に広がるalpine meadowは、土壌炭素蓄積量が多く、現在も炭素の吸収源であることから、アジア陸域さらには地球レベルの炭素収支において重要な役割を担っている。一方、標高の高い生態系は、温暖化の影響を受けやすい脆弱な生態系であり、チベット高原の高山草原においても温暖化がどのような影響を及ぼすかが懸念されている。温暖化の影響を解明し今後を予測するうえで現状把握が不可欠だが、チベット高原の高山草原には現状が把握されていない地域も多く、特に更に高い標高に位置する高山の現状はあまり分かっていない。そこで我々は、チベット高原の高山草原にある高山を対象として温暖化とその影響の早期検出および早期予測を目指した長期研究を展開している。本大会では、生態系の炭素蓄積にも深く関与する生態系CO2フラックスに焦点をしぼり、チベット高山草原の標高傾度に伴う生態系CO2フラックスの特性について報告する。調査は2007年夏に中国青海省の海北試験地近郊にある高山斜面(3600-4200m)で行った。標高200mごとに設置した4つのサイトで小型チャンバーを用いて生態系フラックスを測定し、その後チャンバー内の植生を定量化した。その結果、単位土地面積あたりの生態系呼吸と生態系総光合成量は標高が上がるにつれて減少するが、総光合成量のみ植生限界付近で再び大きくなり、結果的に生態系正味光合成量も植生限界付近で大きいことが明らかになった。単位土地面積あたりのこのような生態系フラックスのパターンは、植物バイオマスの影響を強く受けていることが示唆された。

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