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一般講演(ポスター発表) P2-293
干潟は潮の干満による温度や水分条件の変化にさらされているため,有機物分解に伴うCO2放出量もこれら環境要因の変化に伴って大きく変動していると予想される。演者らはこれまでに,干潟では冠水時より干出時でのCO2放出速度が速く,有機物分解の指標である年間のCO2放出量を推定する際には,温度だけでなく潮汐を考慮する必要があることを明らかにした(佐々木ほか 第54回日本生態学会大会)。そこで本研究では,温度の変化に加えて,潮汐の影響を考慮し,河口干潟での年間CO2放出量を推定することを目的とした。
調査地は広島県黒瀬川の河口干潟に設定した。まず,干出時における干潟表層からのCO2放出量を,赤外線ガス分析装置(IRGA)を用いたDynamic closed chamber(DC)法により気温の異なる三時期に測定して,気温と干出時CO2放出速度の関係を求めた。冠水時における野外での直接的な測定は困難である。そこで干潟表層のコアサンプルを採取し,実験室内においてIRGAを用いたOpen-flow(OF)法により異なる温度条件下で冠水状態でのCO2放出速度を測定した。DC法とOF法による測定値の相関関係が干出・冠水状態において同じであると仮定して,野外における海水温と冠水時CO2放出速度の関係を推定した。以上の結果をもとに,現地の気象データ(気温・海水温,干潟の干出・冠水時間の変動)を考慮して,調査地における年間のCO2放出量を推定,報告する。