| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-294
CO2濃度と気温上昇という温暖化環境下での森林の炭素循環・収支動態を予測するためのオープントップチャンバー(4×4×5m)6基(A1〜A3区, B1〜B2区)が2002年8月、広島大・精密実験圃場に設置され、アラカシが植栽された。うち3基(B1〜B3)は外気温度、他の3基(A1〜A3)は外気+3℃とし、それぞれ1基ずつはCO2濃度を外気×1倍(A1,B1)、1.4倍(A2,B2)、1.8倍(A3,B3)としている。2003年4月から成長量や葉の生理生態を測定すると共に、落葉枝量と土壌呼吸量を月毎に測定し、温暖化環境下で土壌炭素の収支がどのように変動するかの解析をめざしている。今回は、土壌呼吸が安定を示し始めた2005年を中心に落葉枝量と土壌呼吸量について報告する。年間落葉枝量は、植栽したアラカシの成長に伴い増大しているが、B1→B3→B2→A1→A2→A3の順に増加した。すなわち、外気温追随区では、CO2濃度が1.8倍区よりも、1.4倍区で落葉枝量が多く、生産量の高さを示唆した。一方、土壌呼吸は初年度、二年度はどの区も野外の自然林より高い値を示したが、三年度(2005)でほぼ同等となり、その時点での年間速度は、B1→B2→A1→A2→B3→A3の順に高かった。高温・高CO2濃度の環境下で、落葉枝量も増大するが、明らかに土壌呼吸量も増加している。そこで、2005年を例に、B1とA3における両者(土壌炭素のインプットとアウトプット)の収支を比較した。土壌呼吸の半分を根の呼吸としても、A3の土壌腐植の分解量はB3より2.4tC/ha/y 多く、落葉枝量の差異0.56tC/ha/y を大きく上回っていた。根の更新量のインプットを考慮しても、土壌炭素の収支が大きくマイナスに移行していることが示唆された。