| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-295
近年、森林が環境変化に与える影響評価のため大気−陸域生態系間の水・炭素循環が盛んに研究されている。しかし、林冠木を対象とした研究が多く、林床植生を対象とした研究例はまだ多くない。そこで本研究は、北海道北部ダケカンバ林林床のチシマザサ群落の光合成・蒸散速度を定量的に調べ、森林全体の水・炭素循環に対する林床チシマザサ群落の貢献割合を明らかにすることを研究目的とした。
観測は2006年、2007年の6月から10月に行った。チシマザサの個葉の光合成能力と気象データ(光合成有効放射・気温・湿度)、また層別刈取り法により得られたLAIと群落内部の光環境から、群落としての光合成速度と蒸散速度を推定した。さらに、葉と稈の呼吸速度をそれぞれの呼吸曲線から推定した。光合成速度と呼吸速度の差からササの地上部純一次生産速度(地上部NPP)を求めた。また、同調査地のタワー観測によるCO2・潜熱フラックスと土壌呼吸観測データから森林全体の地上部NPPと蒸発散量を得た。
ササ地上部NPPは2006年、2007年それぞれ4.4、4.5tCO2/ha5month、蒸散速度はそれぞれ24.6、26.9mm/5monthとなった。森林全体の地上部NPPは2006年、2007年それぞれ33.3、33.7tCO2/ha5month、蒸発散量はそれぞれ356、317mm/5month であった。よって、地上部NPPにおけるチシマザサの貢献の割合は2006年、2007年それぞれ13.1%、13.4%、蒸発散における割合はそれぞれ6.9%、8.5%となった。
以上より、ダケカンバ林全体の水・炭素循環に対する林床チシマザサ群落の貢献は無視できない割合であることが明らかとなった。