| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P2-297
土壌呼吸は光合成産物を基質とする根呼吸と土壌有機物を基質とする従属栄養生物呼吸に分けられる。土壌呼吸を分離することは炭素動態の各プロセスを理解し、森林全体の炭素収支に関するより正確な値を検証するために不可欠である。本調査は、土壌呼吸と同時に根呼吸を直接測定することによる土壌呼吸の分離を目的とした。さらに正確な根呼吸量を評価するために、現場でインタクト(根を切断しない状態)での呼吸を測定し、切断した根と同様に温度依存性を示すかを検証した。
調査地は富士北麓剣丸尾溶岩流上の98年生アカマツ林で行った。土壌は未発達であり(深度約10cm)、植物根と溶岩に支えられている。
土壌呼吸は密閉法で測定し、根呼吸については根を切り出し洗浄した後、通気法にて季節的に細根(φ<2mm)と太根(2mm≦φ)の温度依存性を測定した。日積算土壌呼吸量は地温から、日積算根呼吸量は地温とバイオマスから算出した。また、8月に根を切断せず洗浄し通気法によって呼吸量の日変化を測定し、温度依存性との関係を検証した。根は呼吸測定後に、表面積と乾燥重量を測定した。
2004年から2007年までの土壌呼吸量は年間平均5.37ton C ha-1、同様に根呼吸量は年間平均2.92ton C ha-1であり、土壌呼吸への寄与率は約54%と推定された。その際、細根の活性は冬、秋、夏、春の順に高いQ10を示した。ただし、切断しない根呼吸の日変化において早朝の呼吸増加、日中の呼吸低下などが観察された。このことは実際の根呼吸は、地温の他に地上部の生理活性など様々な要因が関連すると考えられ、単純な温度依存性ではない可能性が示唆された。