| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-299

炭は火入れ後の土壌の養分動態にどのような影響を与えているのか? 北海道の森林における火入れ実験の結果より

*小林真,Kim Yong-Suk(北大農学院),柴田英昭,野村睦,里村多香美,高木健太郎,佐藤冬樹,笹賀一郎(北大FSC),小池孝良(北大農学研究院)

北海道北部の北大天塩研究林内にて火入れ実験を行い、その後の土壌の養分動態を調べた。火入れは2007年7月に上層にはシラカンバ、林床にはクマイザサが優占する林分にて行った。試験には5m×5mの広さの無処理区、火入れ区、そして炭の影響をみるために火入れ後に炭を取り除いた区(炭取り除き区)を、それぞれ4反復ずつ設置した。サンプリングは、火入れ直前、直後、1ヶ月後、2ヶ月後、4ヶ月後の計5回行った。火入れ直後では、有機物層においてNH4+、可給態PO43-、交換態K+、Na+の濃度が火入れ区および炭取り除き区にて顕著に増加していた。しかし、その後、両区において著しく減少し、1ヶ月ないし2ヶ月後には両区ともに無処理区と同程度の濃度となっていた。火入れ直後の濃度の増加量やその後の変化パターンに火入れ区と炭取り除き区では顕著な違いが見られなかった。一方、有機物層中の交換態Mg2+とCa2+濃度は、火入れ区において火入れ後に一定時間が経過した後で大きな傾向を示すようになり、4ヶ月後では無処理区に比べ顕著に高い値を示した。炭取り除き区では、無処理区との間に顕著な違いは見られなかった。また、有機物層中の交換態Al3+、Fe2+、Mn2+濃度は火入れ区において火入れ後に一定の時間経過した後で無処理にくらべ低い傾向を示すようになり、4ヶ月後では顕著に低い値を示した。炭取り除き区では、無処理区との間に明瞭な違いは見られなかった。本研究から、火入れ後の養分動態は物質によって3つのパターンがあり、火入れ後の時間が経過するにともなって無処理区との違いが顕著になる2パターンに関しては、その推移に炭の有無が関与していることが示唆された。

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