| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-001
植物1個体の総葉面積の成長は、しばしば指数関数及びロジスチック式に従う事が経験的に知られている。これらの式は以下の2つの簡単な仮定から理論的に導く事が出来る。(1)資源が十分、つまり全ての葉を光飽和させた場合の光合成量の総和は、総葉面積に比例する。(2)実際の光合成量は、ポテンシャルとしての物質生産量である光飽和光合成量の総和に、密度効果の項を掛け合わせたものになる。密度効果は葉面積に依存して拡大するが、各時点に於いては全ての葉に等しい割合で掛かる。以上2つの仮定は、個葉の違いを無視しており、個葉の違いを重視した立場からは非現実的である。本発表では、個葉の1枚1枚の違いを考慮しても、前述の(1)(2)の簡単な結果が導かれることを示す。今回、宿根草本キクイモを低密度で植栽し、拡大成長期間に、総葉面積変化、個葉の光飽和光合成能力、光飽和光合成能力と個葉日光合成量との関係、の3つを1−2週間毎に測定した。結果は次の3つである。(イ)総葉面積の成長は初期では指数関数、中期ではロジスチック関数に良く合った。(ロ)個葉の光飽和光合成能力は時間変化し、先端ほど若い葉で能力が高かったが、能力の高い葉と低い葉の割合が一定のまま葉群が成長したため、光飽和光合成量の総和は総葉面積に比例した。(ハ)実測した個葉日光合成量はその葉の光飽和光合成能力に比例した。つまり、光合成能力あたりの日光合成量は、各日において全ての葉でほぼ等しくなった。その比例係数は個体成長に伴いやや減少傾向があった。(ロ)と(ハ)の2つの結果は、(1)(2)のメカニズムに対応し、個葉の違いを組み込んだモデルとして(イ)のロジスチック成長を導くことが出来る。尚、(ロ)の結果は動物個体群における安定齢分布に対応し、(ハ)はField1983の最適化理論から導くことが出来ると考えている。