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一般講演(ポスター発表) P3-002
落葉広葉樹の被陰解除に対する光応答性を明らかにする目的で本研究を行った。供試樹種はブナ科のミズナラ,コナラ,クリ,ブナ,カバノキ科のミズメ,モクレン科のコブシ,ニレ科のケヤキの7種である。
相対PPFDで42.5%,16.6%,7.4%の明るさで2成長期にわたって被陰処理した苗木において,開葉を開始前の4月に相対PPFDが100%の全天空状態になるように被陰を解除し,解除後の解剖学的構造として柵状組織の層数と厚さ,光−光合成特性として曲率,飽和光合成速度を測定して被陰状態と比較した。
柵状組織の層数は被陰が解除されても被陰状態での層数と変わらなかったことから,今回測定した樹種においては,柵状組織の層数が前年の光環境によって決まっていることが確認された。被陰状態においては,相対PPFDが小さくなると柵状組織は薄く,曲率は大きく,飽和光合成速度は小さくなっていた。被陰が解除されると全ての樹種で柵状組織は厚く,曲率は小さくなり被陰時の相対PPFDで差が認められなくなった。しかし,飽和光合成速度については,ミズナラ,コナラを除く樹種では,被陰解除により飽和光合成速度が大きくなり柵状組織の厚さ,曲率と同様に被陰時の相対PPFDで差が認められなくなったが,ミズナラ,コナラにおいては,被陰時の値よりも大きくなることがなかった。以上のことから,暗から明への光環境の変化に対しては,飽和光合成速度よりも柵状組織の厚さ,曲率のほうがより迅速に光適応することが示唆された。