| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-004

カシ8種の窒素利用特性

*香山雅純(森林総研九州),北岡 哲(森林総研北海道),梶本卓也(森林総研九州)

常緑性のカシ類は、九州の暖温帯常緑広葉樹林における主要な樹種である。九州南東部では、8種のカシ類がそれぞれ異なる標高に分布している。標高が異なれば生育環境も異なるため、分布標高を異にするカシは種間で成長特性が異なると予想される。一般に、樹木の成長特性は光合成特性や窒素利用特性と関連しており、個々の種の成長特性を反映する。特に成長量の高い種は光合成速度が高く、窒素を光合成反応に関わるタンパク質に投資する傾向がある。一方、成長量の低い種は窒素を細胞壁に投資する傾向がある。本研究は、生育環境の等しい同一地域に植栽されたカシ類8種の光合成特性と窒素利用特性を種間で比較し、カシ類8種の個々の成長特性を解明することを目的とした。

本研究は、宮崎市高岡町内の国有林内に設けられた、広葉樹試験地 (標高180m、 1996年植栽) に植栽されたアカガシ、ウラジロガシ、シラカシ、ツクバネガシ、イチイガシ、アラカシ、ハナガガシ、ウバメガシの計8樹種を対象とした。カシ類8種の光合成速度は、予備調査より最も光合成速度が最大値に達した2007年11月上旬に当年葉を8個体ずつ測定した。測定に使用した葉は、比葉面積、葉内総窒素濃度を分析したほか、クロロフィル、Rubisco、水溶性・界面活性剤可溶性・界面活性剤不溶性タンパク質も分析した。

カシ8種の2007年11月上旬における光飽和時における光合成速度は、平均21.2 umol m-2s-1であった。樹種間で比較すると、イチイガシは26.5 umol m-2s-1と最も高く、ウバメガシは15.3 umol m-2s-1と最も低かった。また、Rubisco濃度を分析した結果、イチイガシは2.5 g m-2と最も高く、ウバメガシは0.84 g m-2と最も低かった。

日本生態学会