| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-006
葉の通水抵抗は植物体全体の通水抵抗の大きな部分を占めている。また,葉の通水性は葉のガス交換や光合成を制限することが明らかとなり,葉の通水性が植物の重要な生理生態特性として認識されるようになってきている。水が細胞膜を通る時には,ほとんどの水がアクアポリンという膜タンパク質を通るが,植物の葉の通水やガス交換にアクアポリンがどのように関与しているかについては未だよくわかっていない。そこで本研究では,水銀イオンを使って葉内細胞のアクアポリンの水チャネル機能を阻害した葉について,葉の通水性や気孔コンダクタンスを測定し,アクアポリンの葉の通水やガス交換における関与を調べた。対象はブナ科4種,常緑樹のアカガシ・アラカシと落葉樹のコナラ・クリの当年生の陽葉とした。0.2 mMの塩化水銀(II)溶液(HgCl2)を蒸散流によって1時間葉に吸水させ葉内細胞のアクアポリンの水チャネル機能を阻害し,未処理の葉と共に葉の通水コンダクタンス・気孔コンダクタンス・暗呼吸速度を測定した。HgCl2処理した葉の暗呼吸速度は,未処理の葉と有意差がなく,水銀イオンの代謝への影響は無視できた。未処理の葉,HgCl2処理した葉ともに,葉の通水コンダクタンスが高い葉ほど気孔コンダクタンスが高くなる傾向が認められた。HgCl2処理した葉では,葉の通水性が平均で未処理の葉の65‐90%に低下したのに対し,気孔コンダクタンスは未処理の葉の80‐95%に低下した。また,葉の通水性の低下率が高い樹種ほど,気孔コンダクタンスの低下率も高い傾向が認められた。こうした結果は,アクアポリンが葉の通水やガス交換に関与していること,また葉の通水やガス交換の樹種間差にアクアポリン活性の差が関与していることを示唆している。一方,生活型とアクアポリンについては,明確な関係は認められなかった。