| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-009

ヨシの窒素吸収形態と呼吸特性

*中村元香,土谷岳令(千葉大院)

一般に水生大型植物の根圏環境は低酸素状態であり、土壌からの酸素獲得は水生植物にとって極めて困難となる。そのため、水生植物は給気機能を発達させ、地上部から地下部へ酸素を送り込むことで根の活性を維持している。さらに、根から酸素を漏出させることで根の周囲に酸化層を形成し、還元状態で漏出する有害物質から根を保護するとともに、酸化型のNO3−の獲得を可能としている。多くの植物は窒素養分としてNH4+とNO3−の両方を利用する。しかし、NH4+は体内に蓄積すると有害となり、一方でNO3−はNH4+に比べ吸収・同化のためのエネルギー消費が大きくなるとされている。地下部への酸素供給が制限されやすい水生植物ではNO3−の利用は生育に不利となることが予想される。そこで、本研究は窒素吸収・同化のために使われるエネルギーや根の成長のために投資されるエネルギーが吸収する窒素形態の違いに応じてどのように違うかを明らかにすることを目的とした。具体的には、給気機構が発達しているヨシを窒素養分源がNH4+のみとNO3−のみの2条件で水耕栽培し、根およびシュートの乾燥重量、窒素含有率、及び根の呼吸速度を定期的に測定した。次に、各条件において、根の単位乾燥重量あたりの窒素吸収速度(NNUR)及び根の単位乾燥重量あたりの成長速度(相対成長速度;RGRr)を独立変数として根の単位乾燥重量あたりの呼吸速度を説明する重回帰分析をおこなった。

シュートの相対成長速度(RGRs)、NNURおよび根の呼吸速度はNH4+条件のほうがNO3−条件よりも有意に高かったが、RGRsは有意差がみられなかった。重回帰分析の結果では、両条件ともに呼吸速度の変動がNNURのみで説明されてしまった。しかしながら、NH4+を利用した方がより少ない酸素消費でより多くの窒素を獲得できることが示された。

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