| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-011

ミシシッピ湿地林構成樹種の耐塩性に関する生理生態学的研究 -ハリケーン・カトリーナ災害に関連して-

*岩永史子, 竹内貴裕, 平澤麻紀, 山本福壽 (鳥取大・農)

アメリカ南東部沿岸において、海水の侵入と塩の集積による沿岸・および下流域湿地林への影響が危惧されている。2005年には、大型ハリケーンの通過にともなう高波や海水面の上昇、および強風による塩の飛散によって、ミシシッピ下流に成立する湿地林に甚大な被害をもたらした。しかしながら、湿地林構成樹木に関して土壌冠水と相まった塩がおよぼす影響についての情報は十分とは言えない。本研究においては、短期の塩水による沈水が冠水耐性樹種の成長、および生理に与える影響について明らかにすることを目的とした。アメリカ南東部湿地林の主要構成樹種であるヌマスギ(T. distichum)3年生実生ポット苗をもちいて実験を行った。0 ppm (S-0), 4000 ppm (S-4000), 8000 ppm (S-8000)の異なる濃度の塩水に実生苗を完全に沈水させた後、排水し、ポット土壌表面まで冠水したまま生育させた。沈水の処理期間は2週間とし、土壌冠水は6週間とした。また沈水処理を行わずにそのまま野外で生育させたものを対照区とした。測定項目として、排水後の伸長および肥大成長、光合成、蒸散速度、器官別乾燥重量の測定、樹幹基部の組織観察、および無機分析(Na, K, Cl, Mg)を行った。以上の処理および測定は異なる3期間(5月:実験1、7月:実験2; 9月:実験3)で行った。実験1では塩水による顕著な落葉が認められず、総乾燥重量も差は認められなかったが、実験2,3ではS-4000において葉の褐変が認められ、S-8000においては落葉と梢端枯れが認められた。総乾燥重量においてもS-4000およびS-8000で減少が認められた。これらの結果から、塩水の影響は季節が遅くなるほど著しく、また5月頃では成長へおよぼす影響が少ないことが示された。

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