| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-020
日本に自生するジンチョウゲ属には常緑・落葉種に加え、冬緑性という非常にユニークなフェノロジーをもつ種オニシバリが存在する。冬緑性とは夏に落葉し、秋から冬にかけて葉を展開させる性質である。このように近縁種で葉のフェノロジーに大きな変異がみられるのは、非常に稀であり、オニシバリは近縁種と比べて異なるストレス耐性を保持しているかもしれない。
自然環境下において植物は様々なストレスにさらされる。特に冬期の低温は温帯や亜寒帯に生育する常緑樹がもっとも頻繁に受けるストレスである。また、低温下で強い光を受けると、葉では光阻害が生じる危険性が増加する。しかし、これらの常緑樹は低温によって引き起こされる光阻害を回避するため様々な防御機能を保持している。一方、冬緑性オニシバリはどうだろうか?オニシバリは夏に葉を落葉させるため、高温に対する適応能力は常緑樹より低いかもしれない。しかし、オニシバリは秋から冬に葉を展開させることから、冬期の低温に対する適応能力は常緑樹より高い可能性がある。本研究は、冬緑性オニシバリと近縁種で常緑性コショウノキを対象に「冬緑樹は常緑樹より低温適応能力がある」との仮説をたて、この仮説の検証を目的とする。講演では、二種の低温での光合成能力や光合成の温度依存性を中心に議論する予定です。