| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-023
潮間帯は満潮時に起きる海水の進入のため、常に塩分を含んだ冠水にさらされている。マングローブ植物はこの様な過酷な環境に適応した植物で、独特かつ豊かな森林生態系を形成して陸域と海域生態系とをつないでいる。本研究では、マングローブ生態系の基盤である土壌に焦点をあてる。
マングローブ植物の多くは冠水による地下部の酸素不足ストレスに対応するため、通気組織の発達した呼吸根を通じて地下部へ酸素を送っている。送られた酸素は根の呼吸によって消費されるが、一部は根表面を介して根圏へと漏出する。根から漏出した酸素は、嫌気的な土壌中でモザイク状に好気的環境を形成し、微生物環境を変える要因となると考えられている。一方、マングローブ植物が生育することで土壌には大量の有機物が供給される。微生物の有機物分解活動による酸素消費に伴い、嫌気的環境が形成される反面、根近傍には酸素漏出による酸化的環境が形成される、といった複雑な土壌環境が形成していることが予想される。
マングローブ植物が土壌微生物活動へ及ぼしている影響を明らかにするため、沖縄県石垣島浦田原川河口域にて調査を行った。マングローブ林を構成する主要樹種3種(ヒルギダマシ、ヤエヤマヒルギ、オヒルギ)について、各々の根圏・非根圏土壌の化学性を比較した。具体的には土壌間隙水を採取し、微生物代謝産物である硝酸、亜硝酸、アンモニア、鉄(II)、メタン、溶存有機物濃度を測定した。また、土壌の微生物活性、鉄含有量、有機物含有量を測定した。3種の根表面からは漏出した酸素に起因すると思われる酸化鉄皮膜が検出された。また3種共、根圏の方が非根圏より微生物活性が高かった。ヒルギダマシの根圏土壌では、昼間の方が夜間に比べて硝酸と鉄(II)濃度が高かった。