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一般講演(ポスター発表) P3-030
光合成を行っているC3植物の葉では、大気中のCO2は気孔から取り込まれ、葉の内部を拡散してRubiscoが存在する葉緑体まで移動する。最近になって、葉の内部には大きなCO2拡散抵抗があり光合成速度の重要な制限要因になっていることが分かってきた。この内部拡散抵抗には細胞膜の二酸化炭素透過性が強く影響する。細胞膜には水チャネルであるアクアポリンが存在するが、オオムギのアクアポリンHvPIP2;1とタバコのアクアポリンNtAQP1は、水の透過だけでなく細胞膜の二酸化炭素透過性を促進し、同時に気孔抵抗を減少させ、結果として光合成速度を増加させることが明らかになった(Hanba et al. 2004、Flexas et al. 2006)。しかし多くのアクアポリン分子種の中でどのようなタイプのアクアポリンが光合成機能に関与しているのかは全く明らかになっていない。今回の発表では、光合成機能に関与するアクアポリンの候補として新たにCAM植物であるアイスプラント由来のアクアポリンMcMIPAおよびMcMIPBをとりあげ、これらのアクアポリンを過剰発現させた形質転換タバコでどのように光合成機能が変化したかを報告する。McMIPAタンパク量が増加した系統では水分吸収量の増加、光合成速度の増加および気孔抵抗の減少がみられ、植物体の成長も促進する傾向があった。一方、潅水停止により乾燥ストレスをかけたところ、McMIPAタンパク量が増加した系統では光合成速度がほぼゼロになるのに対して、McMIPAタンパク量の増加がみられない系統では光合成速度低下が抑制された。発表では、アクアポリン分子種の違いによって光合成機能に対する影響がどのように異なるのか、また乾燥ストレスに対する光合成反応にアクアポリンがどのような役割を果たしているのかを考察する予定である。