| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-031

中国半乾燥地に生育する2種類のヨモギの水ストレス耐性の比較〜通水コンダクタンスと樹体内の水ポテンシャル勾配〜

*佐々木梨華,李佳陶,石井義明,三木直子,廣部宗,坂本圭児,吉川賢(岡山大・院・環境学研究科)

中国の半乾燥地域に位置する毛鳥素沙地では、約50種のヨモギ属が生存しており、なかでもArtemisia ordosica Krasch.(中国名:黒沙蒿、以下クロヨモギとする)とArtemisia sphaerocephala Krasch.(中国名:白沙蒿、以下シロヨモギとする)は代表的な樹種である。いずれも成長が速く、優れた耐乾性を持っているが、クロヨモギが半固定・固定砂丘だけでなく流動砂丘にも侵入するのに対し、シロヨモギは流動砂丘が分布の中心である。両樹種とも根系は比較的浅いため、成長や生存に土壌水分の変動の影響を受けやすく、土壌水分の変動に対する順応能力の違いによって分布域が異なると考えられる。

よって、本研究では、両樹種の水分生理特性における水ストレス耐性の樹種間差を明らかにし、分布域が異なる原因を明らかにすることを目的とした。そこで土壌水分条件を対照区(pF1.8)、弱ストレス区(pF3.0)、強ストレス区(pF4.2)の3段階に制御して生育させ、通水コンダクタンスと樹体内の水ポテンシャル勾配、バイオマスの分配、蒸散特性などを測定した。

その結果、両樹種とも通水コンダクタンスと樹体内の水ポテンシャル勾配に水ストレスの影響は見られなかったが、日中の根の水ポテンシャルは水ストレス区のほうが対照区より低く、これに順じて茎部の水ポテンシャル、葉の水ポテンシャルが低下した。しかし、両樹種のバイオマスの分配と蒸散特性に水ストレスの影響は見られなかった。

日本生態学会