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一般講演(ポスター発表) P3-032
光環境と植物個体の物質生産量との関係では,個体レベルの形態的特性(各器官へのバイオマス分配と受光体制)と個葉レベルの光合成特性の相互作用が重要な役割をもつ。しかしこれらの特性とその光環境に対する可塑性は樹種間で異なり,それが個体の物質生産性を介して,林床での生育可能な光環境の範囲を決定している可能性がある。本研究ではこの仮説を検証する研究の一環として,冷温帯落葉広葉樹林を構成し,葉の付き方の異なるミズナラQuercus crispulaとウリハダカエデAcer rufinerveの稚樹について,その受光体制および個葉の光合成特性を光環境とともに測定した。さらにこれらのデータを構造−機能モデルY-plantを用いて結合し,個体レベルでの総光合成生産量を解析した。
調査は岐阜大学高山試験地(岐阜県高山市)のミズナラ林において行った。林床はクマイザサの分布によって光環境が不均一であり,材料とした稚樹の生育光環境は相対光量子密度は2.2−18.7%であった。これらの稚樹の最大光合成速度は,ミズナラが3.1-7.1 μmol CO2 m-2 s-1,ウリハダカエデが3.0-5.1 μmol CO2 m-2 s-1であり,個体あたりの1日の総光合成生産量はそれぞれ,0.1-2.1 mmol CO2 day-1および0.23-2.13 mmol CO2 day-1となった。本研究ではさらに,茎の呼吸消費量を考慮して,地上部のバイオマス分配と光環境,光合成純生産量との関係について検討を進める。