| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-035

都市環境が街路樹の光合成と水利用効率に与える影響

*藤野 貢祐,及川 真平,半場 祐子(京都工繊大・生物資源フ)

近い将来、産業活動による影響で二酸化炭素濃度増加に代表される大規模な環境変化が地球全体で生じると予想されているが、産業活動の影響を直接受ける都市部では既に二酸化炭素濃度が高く、局地的な気温の上昇が見られる。都市部の植物は産業活動による環境の変化を緩和する役割が期待されるが、自然環境と比較した場合、都市の植生は成長期に強光・高温になりやすく、その結果乾燥ストレスにさらされることが多い。産業活動による悪影響を和らげるためには、乾燥ストレスに強い耐性を持ち、高い光合成能力を維持できる植物を利用する必要がある。様々なストレスに対する樹木の光合成反応はこれまで国内外でよく調べられているが、その際のストレスは自然環境下によるものを前提としており、都市環境特有の気象によって生じるストレスに着目した研究はほとんど行われていない。また都市環境下での樹木の乾燥ストレス耐性の研究は、都市部での環境悪化を緩和するのに有効な樹木種を見出す手立てとなる。都市環境下で植物が受ける乾燥ストレスを把握するためには、炭素安定同位体解析が有効であり、都市環境下での同位体解析のデータは世界的に見てもほとんど蓄積されていない。そこで本研究では、樹木の光合成反応、乾燥ストレス耐性、外部形態に着目し、都市部と非都市部の街路樹を比較することで、都市環境が街路樹に与える影響を調査することを目的とした。樹木は国内で最も多い街路樹の一つであるイチョウとヒラドツツジを対象とした。9月ごろ、都市部のイチョウは非都市部のものと比べて高い光合成能力を示し、二酸化炭素濃度に対しても高い反応性を示した。またイチョウ外部形態にも都市部と非都市部の間に顕著な差が見られた。測定は7月半ばから10月半ばまで半月に1回行われ、その間モニターした気象条件とも併せて都市環境が与える影響を考察する。

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