| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-036

炭素固定−蒸散のバランスに対するアブシジン酸の影響

辻英人(立命館大・理工)

植物がいつ、どれくらい生長するかはいくつかの制御因子の協調によって調節されている。その一つにアブシジン酸がある。植物は、環境ストレスに応答してアブシジン酸を合成し、これをシグナルとして気孔を閉じることで乾燥条件下での蒸散による水分の消失を防いでいる。このように気孔の変化は、植物の水損失を調節するうえで重要な役割をはたしているが、同時に光合成によるCO2 固定の調節するうえでも重要な役割を果たしている。植物は水損失を抑えながら一方でCO2を取り入れるという競合する要求にさらされている。

本研究では、乾燥条件下で植物が健全に生長するために蒸散と光合成のバランスをどのように調節しているか、また、こうしたバランスにアブシジン酸がどのような影響を与えているかを理解するために数理モデルを構築した。構築した数理モデルでは植物個体を地上部と地下部に分割し、それぞれの水分量と炭素量の関係を表現している。水分は蒸散を駆動力として土壌−地下部(根)−地上部(葉)−大気中へと移動し、炭素は光合成により地上部で固定され地下部へ流転される。水分および炭素の大気とのやりとりは気孔を介して行われ、アブシジン酸を、水分状態に応答し気孔コンダクタンスを調節する要因として組み込んだ。

このモデルを用い、土壌の水分状態を変化させた場合や、人為的にアブシジン酸を投与した場合、また投与したアブシジン酸の生理作用に時間的制限が有る場合など検証した。

日本生態学会