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一般講演(ポスター発表) P3-044
植物の物質生産に関する戦略を理解するためには、光合成器官である葉の空間・時間的な配置と葉の光合成能力の時間的な変化を定量的に把握する必要がある。なぜなら、個体全体の光合成量は、葉の空間的な配置によって決定される光強度と葉の時間的な配置(フェノロジー)と時間的に変化し個葉ごとに異なる光合成能力によって決定されるからである。さらに、光合成能力は、個葉がさらされる光環境とそれに依存した窒素分配の影響を受けることが知られているため、これらの関係を把握する必要もある。
本研究では、被陰された状況で成育する常緑広葉樹(ヒサカキ、ヤブニッケイ、シロダモ、タブノキ、スダジイ)の稚樹の光合成を葉齢・季節ごとに測定した。また、個葉の生育環境として光強度を、また、光合成能力と密接に関係する葉の特性として葉の窒素量を測定した。光合成の測定にはLI-6400を用い、1年間に8回(おおよそ45日に1回)の間隔で光―光合成曲線を決定した。各樹種3本の測定木から当年生葉、2年生葉、4年生葉を各1枚選定し、繰り返し測定した。光合成測定時に、光学的な測定機器(SPAD、アグリエキスパート)を用いて、葉のクロロフィル濃度と窒素量を推定した。また、年間に4回の間隔で感光フィルム(オプトリーフ)を用いて葉に当たる光の強度を測定した。
すべての測定対象樹種で、光飽和最大光合成速度は葉齢に従って減少していた。しかし、最大光合成速度と窒素濃度との関係は弱かった。また、光強度と光合成速度との関係も弱かった。これらのデータを基に、葉齢・窒素濃度・光強度から最大光合成速度を推定する関係式を作成した。