| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-046
日立鉱山は製錬所の亜硫酸ガスにより植物が枯れたが、その後の植栽により緑化に成功している。リョウブは、植栽をしていないにも関わらず日立鉱山に繁茂している樹種の一つである。重金属環境で重金属を吸収しながらも生育できるリョウブの耐性能力には根圏微生物が関与している可能性が考えられる。
本研究では、リョウブ(Clethra barvinervis Sieb. et Zucc.)が重金属(Cu, Ni, Zn, Cd, Pb)をどの程度吸収しているのかを調べるために、2006年6月〜2007年5月にかけて月一回日立鉱山(茨城県日立市)にてサンプリングを行い、リョウブの根圏土壌・根・葉・リターなど各部位の含有重金属濃度を測定し、季節変動を追った。また、リョウブの重金属吸収を比較するために、日立鉱山に植栽されたオオシマザクラやヤブツバキと重金属非汚染地のリョウブ各部位の含有重金属濃度も測定した。その結果、顕著な季節変動は見られなかったが、オオシマザクラやヤブツバキよりリョウブはCu, Zn, Pbを吸収していた。本研究で分析した重金属吸収濃度が特に高くないため、リョウブは重金属吸収能力を利用した汚染土壌の浄化への利用は難しいが、耐性樹種として汚染地の緑化に用いるのは効果があると予想される。
また、リョウブ根から分離した3種類の内生菌を実生に接種し、 滅菌した現地土壌で生育させ、菌の有無によってリョウブの重金属吸収量と生長が変化するかを調べた。その結果、菌接種した実生はコントロールに比べ著しく生長したことから、内生菌が鉱山自生リョウブの重金属耐性と生長に影響を与えていることが示唆された。発表では、これらの内生菌がリョウブの重金属吸収にどのように関与するかについても考察する。