| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-048
高山植物の成長に及ぼす温暖化の影響を明らかにするため、温度上昇実験装置(Open Top Chamber, OTC)を用いて、自然環境と人工的に気温を上昇させた条件下でのGentiana stramineaの光合成特性を調べた。気温上昇実験の処理は青海・チベット高原の東北部(N37°29′, E101°12′, 3200m a.s.l.)の高山草原で1997年から行われてきた。2007年8月9日から14日までの測定結果、OTC外と比べ、OTC内の日平均葉温は1.3〜2.5℃高く、地表面から深さ5cmの土壌温度は0.8〜1℃高かった。OTC内に生育するG. stramineaは、OTC外と比べ、葉が厚く葉面積あたりのクロロフィル含量も高い傾向があった(いずれも統計的有意差は認められなかった)。異なる温度条件下で光―光合成反応を測定した結果、最大光合成速度は、OTC内の植物では測定温度20℃の時に最も高くなることに対して、OTC外の植物では測定温度15℃の時に最も高かった。また、OTC内の植物の最大光合成速度は、測定温度が20℃を超えるとOTC外の植物より高いが、測定温度15℃以下になるとOTC外の植物より低いことを示した。しかし、葉の一日の物質生産量を比較したところ、葉面積ベースまたは幹重量ベースにしてもOTC内の植物の方が明らかに低いことが示された。上記の結果から、高山植物のG. stramineaは気温の上昇に対して最大光合成速度の順化反応がみられたが、その反応は高い温度条件下で個葉の純生産を高められなかったことが示唆された。